

これまで、お酢の仕込みでは
もろみ酒をつくる段階で、たくさんの麹とかけ米を使ってきました。
これは自分の中でもひとつのこだわりで、
しっかりとした旨味のあるお酢につながる大事な部分です。
ただ最近、ひとつ気になる変化が出てきました。
お酢が少し濁り、わずかにとろみが出るようになってきたことです。
原因として考えていること
今回の現象は、
もろみ酒にわずかに糖分が残っていること
これが関係していると考えています。
酢酸菌はアルコールを酢酸に変える働きをしますが、
一部の酢酸菌は条件によって
多糖(セルロースやグルカンなど)を作ることがあります
これが、いわゆる「トロッとした状態」の正体です。
※この多糖自体は基本的に無害です
ナタデココと同じ仕組み
ここで少し面白い話を。
この“トロッとする成分”ですが、
実は
ナタデココと同じような仕組みで作られています。
ナタデココは、酢酸菌の一種が糖を使って
セルロース(食物繊維)を作り出したものです。
つまり
発酵の中で菌が作った“繊維”が形になったものです。
今回のお酢で起きている現象も、
規模は違いますが
同じように菌が多糖を作っている状態
と考えることができます。
※この成分自体は基本的に無害です
ただし、
お酢としてはサラッとした状態が望ましいため、
製造上はコントロールしていく必要があります。
なぜ起きるのか(発酵の流れ)
発酵の流れで考えると
① 糖が完全にアルコールに変わりきっていない
↓
② アルコール度数がやや低い状態で酢酸発酵が進む
↓
③ アルコールは減るが、酸度の立ち上がりが遅れる
↓
一部の菌が活動しやすい状態が生まれる
このタイミングで、粘性を出す菌が働くことで
今回のような変化が起きていると見ています。
出やすい条件
このような状態は、以下の条件で起きやすくなります。
- 残糖がある
- 酸度の立ち上がりが遅い
- 酢酸発酵がゆっくり進みすぎる
改善の考え方
基本はシンプルです
- 糖を残さない
- 酸を早く立ち上げる
- 発酵を安定させる
具体的には、
- アルコール発酵で糖をしっかり使い切る
- 種酢を適切に使う
- 元気な菌膜を使う
- 酢酸発酵をダラダラさせない
今回試している改善

今回、自分なりにひとつ試しているのが
水を加えるタイミングの調整です
これまでは
アルコール発酵が終わってから
酢酸発酵のタイミングで水と種酢を追加
していましたが、
今回は
アルコール発酵の途中で、一部の水を加えます
狙い
- 酵母が弱る前に環境を整える
- 糖をしっかりアルコールに変える
- 発酵を最後まで持っていく
結果として
アルコール濃度自体は下がるが、
生成されるアルコール総量は増える
そして
酢酸発酵に入ったときに、
中途半端な状態を作らない
これが今回の狙いです。
菌との付き合い方
酢酸菌は引き継いで使っているため、
完全に殺菌することはしていません。
発酵は「菌を殺す」ものではなく
「バランスを整えるもの」だと考えています
その中で、
- 糖
- アルコール
- 酸度
このバランスをどう作るかが大事になります。
種酢について
種酢に関しても、粘性が出ているものは軽く火入れして使用していますが、
糖分が残っている可能性もあるため、ここも今後の検討ポイントです
まとめ
今回の変化は、
品質として問題があるわけではありませんが
発酵のバランスが少し崩れているサイン
だと捉えています。
お酢自体はしっかり良いものができていますが、
やはり「サラッとした状態」を安定して出すために、
仕込みの設計を見直していきます。
🔜 今後について
今回の仕込みの結果は、
1〜2ヶ月後にまた報告したいと思います。
発酵で起きる変化の多くは“失敗”ではなく、条件によって現れる現象の違いです。
その違いをどう捉え、どうコントロールしていくかが、ものづくりの面白さでもあります。
